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7月31日の物語

7月31日
読了時間: 2分

新しい人が加わる日は、いつものラウンジが少しだけ新鮮な景色になる。


この日、初めてラウンジへやってきたのは、住民になったばかりのけいちゃん。


「まずは自己紹介をしよう。」


そんな一言から、ホワイトボードいっぱいに、それぞれの好きな食べ物や趣味、特技、MBTI、さらには黒歴史まで書き出していく。


同じ自己紹介でも、書き方は人それぞれだった。


文字を大きく書く人、丁寧にまとめる人、イラストを添える人。


特にみずきちのホワイトボードは、名前のデザインや絵まできれいにまとまっていて、「さすが」と思わず声が漏れる。


一方で、自分のことを書くとなると意外と言葉が浮かばない。


好きなものはあるはずなのに、「自分って何が好きなんだろう」と少し立ち止まってしまう。


自己紹介とは、相手に伝える時間であると同時に、自分を見つめ直す時間でもあるのかもしれなかった。


そのあとは、「佐藤です。好きなおにぎりの具は梅です。」という自己紹介ゲームを囲む。


せいとがルールを説明しながら進めていると、電車の遅延で一時間も閉じ込められていたという、けいちゃんの友人がようやく到着。


「間に合ってよかった!」


自然と拍手が起こり、もう一度最初からゲームを始めることになった。


好きなお寿司のネタ、最近おいしかったもの、お気に入りの場所。


お題が変わるたびに、その人らしい答えが並んでいく。


中でも、せいとが「小学校二年生から六年生の夏まで住んでいた家の二階にあるトイレ」と答えたときは、一同大笑い。


あまりにも具体的な答えだったにもかかわらず、けいちゃんがしっかり覚えて答えられたことに、今度はせいとが驚いていた。


ゲームが終わっても、お題カードはまだたくさん残っている。


「二週間休みがあったら何をする?」「体験してみたい仕事は?」


そんな問いをきっかけに、音響や照明、水族館の飼育員、タクシー運転手、映画の環境音を作る仕事など、それぞれの憧れが少しずつ語られていく。


今の自分にはない技術だからこそ、一度やってみたい。


そんな素直な気持ちが重なり、気づけば初めて会った人同士とは思えないほど話が弾んでいた。


帰る頃には、「またみんなで集まりたいね」が、ごく自然な約束になっている。


新しく始まる出会いは、特別な出来事がなくても、ゆっくりと言葉を交わす時間の中で、少しずつ仲間へと変わっていくのだった。

 
 

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