8月27日の物語
最近シェアハウスへ引っ越してきたしおんが、初めてラウンジへやってきた。
この日は、月曜日からみんなで書き継いできた脚本を全員で読み合わせることに。
完成した物語は、一言で言えばカオスだった。
雀荘でチェスをしながら王手をするような、どこかで見た“カニの矛盾画像”を思わせる世界。
それでも、日ごとに違う人が書いたからこそ、それぞれの個性が不思議なくらい残っている。
くぼりおが客役、せいとが歌とマスター、しおんが幼馴染役を担当して読み進めていくと、最後にはくぼりおへ突然のインプロという無茶振りまで飛んできた。
「え、ここから!?」
困りながらもなんとか応えるくぼりお。その絶妙なところで友人たちから拍手が起こり、演じる側と見ている側の息がぴたりと合う。
住民だけではなく、遊びに来た友人たちまでいて初めて、このラウンジの時間は完成するのかもしれない。
その後は、いっちーによるお絵描き講座。いっちーが描いたキャラクターの輪郭に、友人たちがうろ覚えで足りない部分を描き足していく。
突然のお題に戸惑いながらも、出来上がってみれば意外なほどの完成度。
そのまま自由なお絵描きへ移る頃には、最初より少しだけ線にも自信が宿っていた。
一方では、関西弁の仕事を控えたくぼりおへ、せいとと友人によるスパルタ講座も開講。
「関西弁はテンポ」
そう言われても、くぼりおは「どういうこと……?」と頭を抱えるばかり。
いっちーも言葉にはせずとも、頑張れと念を送るように見守っていた。
そんな光景を眺めながら、しおんも少しずつこの場所の空気を知っていく。
芝居をしたり、絵を描いたり、誰かの挑戦をみんなで応援したり。
初めて降りてきたラウンジは、きっと説明するより、こうして一緒に過ごすほうがずっと分かりやすい場所だった。
