8月3日の物語
ラウンジには、それぞれが持ち寄った「好き」が、自然と集まっていた。
かりんが出演したミュージカルの話になると、友人たちは好きだった場面や心に残ったセリフ、俳優のお芝居、演出や衣装について次々と言葉を交わしていく。
同じ作品を観ていても、心を動かされた瞬間は人それぞれ。
「あのシーンが好きだった。」
「私はあの表情が忘れられない。」
そんな一つひとつの言葉に、かりんは静かに耳を傾けていた。
住んでいる場所も、歩んできた道も違う人たちが、一つの作品をきっかけにつながっていく。
演劇には、人と人を近づける力があるのだと、改めて感じられる時間だった。
そして、率直な感想を受け取ったかりんは、「応援してくれる人たちのために、次も頑張ろう」と、次の舞台へ向かう熱い想いをそっと胸に灯していた。
その横では、「TRPGをやってみよう!」という友人の提案で、新しい物語が始まる。
経験者のせいとと友人が、初挑戦のくぼりおへルールを説明するものの、頭の上には大きな「?」が浮かんでいる様子。
そんな姿にみんなで笑いながらも、物語は少しずつ進んでいく。
最初は戸惑っていたくぼりおも、場面を重ねるごとに少しずつ世界へ入り込み、必死に物語についていこうとしていた。
誰かが物語を作るのではなく、その場にいる全員で物語を育てていく。
TRPGならではの面白さを味わいながら、最後には思わず拍手が起こるような結末を迎えることができた。
「面白かったね。」
その一言には、同じ時間を一緒に旅した人だけが分かる満足感が込められていた。
作品について語る時間も、新しい物語を生み出す時間も、誰かの「好き」に耳を傾ける時間も、どれもこの場所だからこそ生まれるもの。
穏やかな会話の中で、それぞれの世界が少しずつ重なり合っていく、そんなあたたかな夜だった。
