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日々の物語
12月24日の物語
ラウンジの扉が開くたび、赤い布と鈴の気配がふわっと流れ込んだ。 つばさは王道のサンタで胸を張り、はるきはおしゃれに色を合わせたサンタ、たいがはクリスマスツリーコーデで、いっちーはいつもの服にサンタ帽だけ— その“抜け”が妙に似合っていた。 みんなの友だちまでサンタで現れて、ケーキの箱がテーブルに増えていく。 はるきの友人が持ち込んだノンアルのシャンパンを開けた瞬間、勢いよく泡が噴き出して床へ散った。 「うわ、ごめん!」の声に、誰かが笑って、すぐ拭く手が伸びる。 そんな小さな事故まで、今日の飾りみたいだった。 チキンを頬張り、ケーキを分け合い、タピオカが届いたら歓声が上がる。 コーラで乾杯して、はるきは絵を描きはじめ、いっちーはMCオーディション用の台本を考える。 ボードゲームの山の向こうで、つばさの“常識クイズ”が始まり、気づけばみんなが同じ方向を向いていた。 好きなことを好きなままにしているのに、何かが始まると自然に輪になる。 年に一度の華やかさが、誰かの居場所をそっと確かめてくれる夜だった。
12月20日の物語
ラウンジには住民も友人もふらりと集まって、それぞれの“好き”が小さく鳴っていた。 いっちーはソファの端で、せいとが流行らせたヨーヨーを黙々と回している。 糸が描く弧がきれいで、見ているだけで肩の力が抜ける。 あゆむは謎の吹楽器を持ち込み、ご機嫌に音を転がしていた。 何の楽器か分からないのに、音だけはちゃんと「ここは安心していいよ」と言ってくる。 ふと、あゆむがケンタッキーの冬CMのテーマを吹き出した瞬間、りのが笑って、ささみがつられて、誰からともなく「ケンタッキー食べたい!」が飛び交った。 その声を聞いていたささみの友人が、当然みたいな顔でUber Eatsを開く。 届いたバレルをテーブルに置いたら、そこだけ少し早いクリスマスになった。 紙袋の音、骨の山、あゆむの演奏の続きを待つ間。 いっちーのヨーヨーが最後にきゅっと戻る音が、夜のしあわせを結んでいた。
12月17日の物語
ラウンジでは、うめしゅーが作ったカードゲームがいつの間にか合言葉みたいになっていて、いっちー、つばさ、たいがの三人が全力を出して遊んでいた。 勝ち負けのたびに空気が弾み、いつもの夜が少しだけ子どもっぽくなる。 誰ともなく「これ、やってみる?」と口にして、今度はAIが書いた台本で小さなお芝居。 言葉の癖が妙に整っていて、だからこそ、三人の息遣いが逆に際立って、笑いがこぼれた。 そこへつばさが急に「クイズしよう」と言い出す。 ラウンジにいる人たちで即席のグループができて、最初は“常識”のはずだったのに、後半はいつの間にか“つばさクイズ”になっていた。 妹の名前だとか、年齢差だとか、答えが正しいかより、思い出に触れるほうが面白い。 その自由さが、中学校の休み時間みたいで。 明日が来ても、今日の笑いだけは、しばらくここに残っている気がした。
12月8日の物語
ラウンジに、紙の擦れる音が混じった。 うめしゅーが持ってきた台本は、ただの文字じゃなくて、誰かの呼吸の置き場みたいに見える。 せいととけんじは、その一行一行に顔を近づけるようにして、うめしゅーの言葉を受け取っていた。 「そこ、もう少し“言わない”でいい」言い切ったあとに残る間まで、稽古の一部になる。 真剣さは不思議と空気を柔らかくして、ラウンジのいつもの雑音さえ、味方に変えていく。 気づけば稽古は終わっていて、話題は舞台裏へ滑り込んだ。 きつかった現場のこと、救われたひと言のこと、笑い話にできるまでの長い時間のこと。 頷きが重なるたび、ここにいる全員の明日が、ほんの少しだけ軽くなる。 その一方で、隅のほうでは、うめしゅーの友人たちが静かにボードゲームで遊び始めていた。 見慣れた光景に「いつものうめしゅーだな」と言いたげな空気が漂って、誰もそれを咎めない。 真面目と気楽が同じ部屋で共存していることが、なんだかあたたかい。 台本を閉じた音が、今日という一日をそっと締めて、余韻だけがゆっくり灯り続けていた。
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